小児心身外来

心身外来について

こどもは心身が未分化であり、心理社会的ストレスが身体症状として表現されやすく、心身ともに成長発達していくことから、年齢によって対象となる状態も変化します。
乳幼児期には夜泣きや夜驚症のような睡眠の問題、トイレットトレーニングに関する頻尿や遺尿などの泌尿器系心身症、反復性腹痛など消化器系心身症がしばしばみられます。学童期以降になると頭痛、腹痛、めまい、倦怠感などの訴えが明確化してきて、大人でも見られるような片頭痛などの慢性頭痛や朝が苦手で立ちくらみやめまいなどを起こす起立性調節性障害、腹痛、下痢、便秘を繰り返す過敏性腸症候群などがみられるようになります。こうした疾患は適切な治療や対応が必要な病気であり、体質の問題ではありません。
当院の小児心身外来では、こうした心身の状態が関与するお悩みをご本人から詳しくうかがった上で、不安や心配の軽減をサポートし、どうすることがベストかをお子様自身が考えるためのお手伝いをしていきます。
診断に際して疾患を除外して絞り込むための検査を必要に応じて行い、心身を総合的に評価していきます。治療では、より健康的でストレスの少ない生活を送るための幅広い支援を行い、ご家族や先生をはじめとした周囲の方にもお子様が抱えている問題を正しく理解して適切に対応できるようサポートしています。

心身外来でよくみられる症状

下記のような症状でお悩みがありましたら、お気軽にご相談ください。

など

心身外来の対象となる
主な疾患

夜尿症

「5歳以上の小児に、睡眠中に起こる尿失禁で、1か月に 1回以上の夜尿が3か月以上続くもの」 を「夜尿」といいます。(夜尿症診療ガイドライン2021)
一般的には6歳になっても夜尿が続く場合に治療が必要な場合があります。適切な診断、治療によって2~3倍治る率が高くなるので、早めにご相談下さい。
「恥ずかしいこと」「隠しておきたいこと」と考えられがちで、ひそかに悩んでいる親子は多く 子どもだけでなく、親の悩みでもあります。 一方で遺伝傾向があるので、保護者自身の夜尿経験をもとに、「自分も治ったので、そのうち治るだろう」と様子を見ているケースもあります。適切な診断、治療によって2~3倍治る率が高くなるので、早めにご相談下さい。

夜尿症の治療について

生活改善
  • 規則正しい生活
  • 水分の取り方(特に夕食後)
  • 寝る前にトイレに行き、夜中にトイレに起こさない

上記のような生活改善が治療の基本になります。
当院では生活改善のポイントを具体的に説明し、うまくできているか日誌をつけて確認します。また便秘が夜尿症の原因となることがあり、便秘がある場合は便秘の治療を優先して行います。

薬物療法

生活改善でも症状が続く場合は薬物治療を行います。当院ではおしっこの量を抑えるホルモン薬や漢方薬での治療を行っています。

アラーム療法

おねしょをアラームで知らせてお子さまに認識させ、それを繰り返すことで夜間のおしっこの産生量が減ったり、膀胱に尿をためられるようになることが知られています。お薬を使用しないため安全性は高いですが、アラームの機械は自費で購入する必要があります。

慢性頭痛

頭痛は子どもの訴えの中でよくみられるものであり、何らかの原因となる病気があって発生する二次性頭痛と、明らかな病気のない一次性頭痛に大別されます。診察や必要に応じてMRIなど頭の画像検査を行い、まずは危険な二次性頭痛を鑑別、除外します。一次性頭痛と判断された場合、慢性的に多くみられるのは片頭痛と緊張型頭痛です。
日本人小児の片頭痛有病率は小学生で3.5%、中学生で5.0%、高校生で15.6%。緊張型頭痛は小学生で5.4%、中学生で11.2%、高校生で26.8%というデータがあり、小学生でも一定数は存在することがわかっています。
慢性頭痛の治療はまずは生活指導など頭痛の誘因を避ける患者教育を行い、痛みが強いときの痛み止めの使用で対処します。生活指導や痛み止めの使用でよくならない場合は予防薬を定期的に服用することを考慮します。

起立性調節障害

10代前半に多い自律神経機能不全による疾患で、臥位、座位から立ち上がるときに、立ちくらみや頭痛、めまい、動悸などの症状を起こします。朝に症状が強く現れやすく、朝なかなか起きられなくなり、登校しぶり、不登校状態を呈することもあります。午後になると症状が軽減するため仮病と間違われることがありますが、自律神経の機能低下によって循環器系の機能の調整がうまくいかなくなることが原因で生じています。こうした症状や変化は、自分ではコントロールができません。起立性調節障害は、決して怠け癖ではなく、意思ではどうすることもできない病気だということをご本人や周囲が正しく理解することが重要です。
当院では血液検査による貧血の有無の確認、尿検査、起立テストと呼ばれている起立性調節障害の検査を行い、総合的に判断して診断しています。
起立性調整障害では、急激な体位変換によって血圧が大幅に下がってしまうことがあり、体位変換時の注意点をわかりやすくお伝えし、こまめな水分摂取などの生活習慣に関するアドバイスも行っています。必要な場合には内服治療を併用し、心理的にもしっかりサポートしています。

過敏性腸症候群

腹痛を伴う下痢や便秘といった症状が数か月以上続き、検査をしても潰瘍や炎症などの器質的な異常が発見できない場合に疑われる疾患です。腸管の機能に問題があって症状を起こすと考えられています。腸管の機能は自律神経がコントロールしていますので、不安や緊張などの影響を大きく受けます。若い方の発症が多く、お子様の腹痛の原因でもよくある疾患です。
発症に自律神経が関与する起立性調節障害や不眠、頭痛などを合併することも多くなっています。当院では、便潜血検査や血液検査などで消化管の出血や全身の炎症の有無を確認した上で、症状や状態、ライフスタイルに合わせた処方を行い、心理面もサポートを行っていきます。

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